こんにちわ、新庭(@araniwakon)です。
今日は、最初の一文で読者をつかもうというお話です。
ワンシーンではなく、一文というのがポイントです。
最初の一文が魅力的であれば、読者の心を掴める確率がぐっと上がります。
最初の一文の重要性
最初の一文は、小説の顔のようなものです。
見知らぬ小説を読む時、どのタイミングで面白いかどうかを判断しますか?
1ページだったり、10ページだったりすることもあるでしょう。
私は最初の一文をすごく注目します。
もちろん、一文だけですべてを判断することはできません。
しかし、冒頭一文のインパクトが強ければ、読者も「おおっ」と引き込まれることでしょう。
小説は、圧倒的に冒頭が大事だと、私は考えます。
なぜなら、一文を読んだだけで「この作者はちゃんと小説を書ける人間だ」と感じるからです。
例えばですが、有名な小説を思い浮かべてください。
そうですね……「走れメロス」とか、いかがでしょうか。
太宰治作のそれを、小学校の授業で読んだことがある方が大多数ではないでしょうか。
この作品の、最初の一文が、
「メロスは激怒した」
出店:太宰治 【走れメロス】新潮文庫
ですが、これを知らない人はいますでしょうか。
この一文で、主人公がメロスであり、怒っており、何か物語が動き出す予感がします。
- メロスってどういう人なのか?
- 何に対して怒っているのか?
- 怒るような話なのか?
そして、シンプルであり、頭にものすごく残りやすいです。
冒頭一文だけでセンスが感じられるのは、素晴らしいことだと思います。
最初の一文で読者を掴め
最初の一文で、読者の心を掴みましょう。
もちろん長編小説だと350枚以上ですし、最初の一文だけで判断できないこともあります。
しかし、冒頭一文が優れていることで、読者になってもらえる確率は、ものすごく上がります。
「なんか、おもしろくなさそうだなあ」
そんな風に思われたら、最後まで読んでもらえませんよ。
「最後まで読んでもらえれば、おもしろさがわかってもらえる!」
その意見は作者のものです。読者はそう思ってくれません。
読者を味方につけるためにも、最初が肝心なのです。
「感情」から書く脚本術という本では、冒頭の重要性について言及されています。
最初の一文で、絶対に読者の喉元を掴め。次の文で親指を気管に捻じ込め。 後は壁に抑えつけて、最後まで離すな。 ――ポール・オニール
出典:カール・イグレシアス【「感情」から書く脚本術】 フィルムアート社
とてつもなく良い言葉だと思います。
もちろん、一文だけではなく、それに続く文章も魅力的であるべきであります。
すべてのページに渡って、面白いという感情を起こさせるのが、理想です。
しかし、最初がつまらなければ、読者は読んでくれないことが多いです。
そのためにも、冒頭には力を注ぐべきではないでしょうか。
私が好きな冒頭の例
ここから、私が好きな小説の冒頭を紹介していきます。
ただ私が紹介したいだけですので、あしからず。
何とかと煙は高いところが好きと人は言うようだし父も母もルンババも僕に向かってそう言うのでどうやら僕は煙であるようだった。
出展:舞城王太郎「世界は密室でできている。」講談社文庫刊
私事ですが、舞城王太郎先生が大好きです。
その中でも一番好きな小説が、この「世界は密室でできている。」です。この最初の一文だけは、本当に大好きで、これを読んだだけで「あ、絶対面白いやつだ」と思ったものです。
この文章のセンスがたまりません。「バカと煙は高いところが好き」という言葉があります。この主人公は自分をバカと言われているにも関わらず、そうではなくて煙だと言っているところが面白い。
減るもんじゃねーだろと言われたのでとりあえずやってみたらちゃんと減った。私の自尊心。返せ。
出展:舞城王太郎「阿修羅ガール」新潮文庫刊
同じく舞城王太郎先生の「阿修羅ガール」です。
第十六回三島由紀夫賞を受賞した作品です。
この舞城センスがたまりません。
余談ですが、舞城先生は覆面作家のため、授賞式には出ずにコメントだけ残しました。そのことを別の作家が、芥川賞の授賞式でいじったという話があります。興味ある方は調べてみてください。
愛は祈りだ。僕は祈る。
出展:舞城王太郎「好き好き大好き超愛してる。」講談社文庫刊
同じく舞城王太郎先生の「好き好き大好き超愛してる。」です。
第131回芥川賞候補になった作品です。
タイトルのインパクトが抜群すぎて、一度聞いたら忘れないんじゃないかと思います。
この冒頭もシンプルかつ、テーマをストレートに伝えており、たまりません。
舞城先生は愛をテーマにした作品を書きまくっていますが、それがドストレートに出た作品なのかなと思います。
この小説には暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています。帯にそんな惹句が書かれている小説を求めて僕は夜月の部屋へと脚を運んだ。
出展:西尾維新「きみとぼくの壊れた世界」講談社ノベルス
化物語で有名な西尾維新先生の作品「きみとぼくの壊れた世界」です。
クビキリサイクルから入った私ですが、他のシリーズも読んでみようと思い、本屋でぱらぱらめくったとき、この冒頭が目に飛び込んできて、レジに飛び込みました。
なんていうか、なんか、良いんですよね……。伝わらないかもしれませんが。
終わりに
小説の冒頭を少し読んだだけで、その小説の虜になることがあります。
買おうかどうか迷っている時、最初の一文にビビっときて、買ってしまうことだってあります。
読者が最初に読む部分に力を入れるのは、大事なことです。
みなさんも、最初の一文に力を入れてみてはいかがでしょうか。
コメント