こんにちわ、新庭(@araniwakon)です
今日は読書感想として、本格推理13(鮎川哲也編)を書いていきます。
というか、どうしても紹介したい作品に出会ってしまったので、書かせてください。
その作品を紹介するためだけに、このブログを書きました。
紹介させてください!
そして、その作品を読んでください!
私と本格推理13との出会い
この前、ふらっと近所の図書館に行くことがありまして、そこで何か面白そうな本はあるかな、と思ってぶらぶらしていたところ「本格推理13」という本を目にしました。
なぜか13巻しかなかったのですが、鮎川哲也編ということで興味をそそられまして、ぱっと借りてみました。
本格推理とは?
かつて、ミステリ作家の鮎川哲也先生が、本格ミステリの短編を公募しました。
応募作の中から、鮎川先生が選んだ作品が本になるという企画です。
すべての作品を鮎川先生が目を通すという、ファンにはたまらない企画だったでしょうね。
もし、そのような賞が今あるなら、私は応募してたと思います。
1993年から2009年まで、光文社文庫で出版されています。
本格推理としては全15巻。
新・本格推理として全9巻。
また、別冊の本格推理マガジンも、全五巻が刊行されています。
現在では、ミステリーズ!新人賞がありますが、かつてはそのような本格ミステリの短編の賞はなかったようです。
本格推理の掲載者は粒ぞろい
この本格推理ですが、後に作家としてデビューされた方も応募されており、なかなかのメンツがいるので、面白いです。
(受賞者の例 一部)
東川篤哉:ドラマ化もされた『謎解きはディナーの後で』で本屋大賞。
城平京:大ヒット作『虚構推理 鋼人七瀬』で本格ミステリ大賞。
田中啓文:『水霊 ミズチ』が映画化。『渋い夢』で日本推理作家協会賞短編部門受賞。
三津田信三:『水魑の如き沈むもの』で本格ミステリ大賞。
蘇部健一:『六枚のとんかつ』にてメフィスト賞。
大山誠一郎:『密室蒐集家』で本格ミステリ大賞。
霧舎巧:『ドッペルゲンガー宮』でメフィスト賞。
黒田研二:『ウェディング・ドレス』でメフィスト賞。
鏑木蓮:『東京ダモイ』で江戸川乱歩賞。
北森鴻:『狂乱廿四孝』で鮎川哲也賞。
こうやって見ると、すごいメンツがそろっていますね。他にも今では有名な作家がいらっしゃいます。
自分の好きな作家のデビュー前の短編が読めるのは面白いと思いませんか?
本格推理13の掲載作品
収録作品は順番に、下記となります。
林泰広:プロ達の夜会
飛鳥悟:死霊の手招き
城之内名津夫:遺体崩壊
南雲悠:猫の手就職事件
涼本壇児郎:黄昏の落とし物
八木健威:水の記憶
砂能七行:紫陽花物語
岡村流生:『青い部屋』に消える
谷口綾:信じる者は救われる
葉月馨:クリスマスの密室
湯川聖司:ある山荘の殺人
村瀬継弥:暖かな病室
鮎川哲也:海彦山彦、遺書、殺し屋の悲劇、ガーゼのハンカチ、酒場にて
掲載作品、多いですね。
短編なのでさくっと読めるかなと思うので、ぱぱっと読んでいきました。
順番に感想を書こうと思いました。
しかし、大問題が発生してしまいました。
私の中で、一作が圧倒的過ぎて申し訳ないんですが、他の作品が全部かすんでしまうくらいの印象でした。
全部ちゃんと読みました。
どれもこれもミステリしてました。
ただね、もうね、その作品が全部、最後の最後にすべてを持ってってしまって
「いやこの文庫本、最後にこれ持ってくるのかー、くっはー、最後まで読んで良かったわマジで」
という具合で、最後の作品だけど、そいつの感想を最初に持ってきた過ぎて、たまらなさすぎて、もう。
ほんとにこれだけは読んでほしい。そしてこの気持ちを共有したい。
なので、みなさん。
本格推理13の、最後の作品を、紹介させていただきます。
「暖かな病室」は絶対に読むべし
村瀬継弥:暖かな病室
これが、私の最高におすすめする、最高の短編小説です。
これやばいです。
あらすじを簡単に書きますと
「余命数ヶ月の妻は学生時代、お金に困っていたが、Aさんという方から援助をもらっていた。しかし、Aさんは名乗り出ることはなかった。どうしてもAさんに会いたい妻の願いを叶えるため、夫はかつて妻が通っていた高校へと足を運ぶ」
という感じです。
この作品、ミステリというのに、人情話で泣かせにかかってきます。
『美味しんぼ』や『翔太の寿司』も顔負けの人情話が炸裂します。
1ページ目から、ぐいいいいっーって世界に引き込まれて、そのままページをめくる手が止まらないし、謎自体がすっげー魅力的に見える。
「ちくしょー、そうかー、そこかー、あー暖かい病室やんけ、マジで」
って思ってしまったんですよね。
もうこの一作を読むためだけに、みんなにこの文庫本を手に取って欲しい。
私の心を打ち抜きました。ドストライクで。
読み終わった後に「これやっべーわ、マジでやべえ。こんな作品あったんかよ」って感動。
こんな気持ち、久しぶりでした。
他の人は、どんな感想を書いてるのかなとネットで検索してみたりもすると、やっぱりこの「暖かな病室が群を抜いていた」「暖かな病室が面白い」「一番好きなのは暖かな病室」という意見が見つかります。
そういうわけで、私は村瀬継弥先生の『暖かな病室』を、断固としておすすめします。
村瀬継弥先生について
この方、こちらの作品で、鮎川哲也賞の佳作を受賞されています。
「藤田先生のミステリアスな一年」です。
こちらもなかなか面白かったです。
この作者は他にも作品出してるようなので、もう早速ね、手に入れて読んでみる気満々になって、色々と手に入れてしまいました。その感想はまた別途書かせていただきます。
掲載作の感想について
全作品に感想メモを記載しておきます。おすすめ度も5段階で書いておきます。
ネタバレ含みますので、気になる人は注意してください。
感想については、私個人の好みも反映されていますので、低評価にしてしまったものもありますが、ご了承ください。
林泰広:プロ達の夜会 ★★★☆☆
女優の元にサンタがやってくる話。話がところどころ不自然だったが、最後まで読むと納得。なぜなら読者を騙そうとしてるため。
飛鳥悟:死霊の手招き ★★★☆☆
幽霊がマンションの上で手招きして、それに引きずられるように落下して死ぬ人の話。ホラーテイストなミステリ。トリックはすぐわかったが、わくわくした。
城之内名津夫:遺体崩壊 ★★★☆☆
死体がドロドロになってた話。タイトルはすごく良いんだけど、すぐにオチがわかってしまったのが悲しい。
南雲悠:猫の手就職事件 ★★☆☆☆
警察に切り取られた猫の前足が送られてくる話。力技でまとめた感じ。ネタが最初にあって、そのために舞台を作り上げた感がすごくあった。
涼本壇児郎:黄昏の落とし物 ★★★☆☆
ホームレスがビルから落ちて通行人を巻き込んで死んだ話。はったりで犯人を自白させるような、探偵が行き当たりばったりなのはあんまり好きじゃないかなあ。
八木健威:水の記憶 ★★☆☆☆
喫茶店のオブジェであるイルカの中で事件が起こった話。不完全燃焼で後味が悪いなあという感じ。
砂能七行:紫陽花物語 ★★☆☆☆
老婆がこっちをじっと見てる話。こういうオチは、どうも好きになれなかった。
岡村流生:『青い部屋』に消える ★★☆☆☆
七色館という館で起こった殺人事件。やっぱり、こういうオチは、どうも好きになれない。
谷口綾:信じる者は救われる ★★★★☆
地蔵を盗まれたじいさんが怒ってる話。オチは「なんやねんそれ」だったけど、密室の謎は「なるほど」とうなった良い作品でした。
葉月馨:クリスマスの密室 ★☆☆☆☆
誰も入れない部屋にクリスマスプレゼントが置かれていたという話。ちょっと残念な感じでした。
湯川聖司:ある山荘の殺人 ★★★☆☆
二人称で書かれた山荘での殺人事件。二人称って独特。偶然に助けられる主人公はあんまり好きじゃないかなあ。野良犬って偶然要素すぎませんかね。
村瀬継弥:暖かな病室 ★★★★★
余命少ない妻の恩人である「Aさん」を探そうとする主人公の話。
傑作。以上。みんな読むがいい。
鮎川哲也:海彦山彦、遺書、殺し屋の悲劇、ガーゼのハンカチ、酒場にて★★★☆☆
いずれもショートショート。なるほど、という感じ。
最後に
今回、図書館でふと目にとまった本で、素晴らしい短編と出会えることがありました。
自分の好きな本だけを読んでいると、出会えないことがあるんだなとしみじみ思いました。
みなさんも、誰かがおすすめされた作品は、自分の好みじゃなくても、読んでみるというのはいかがでしょうか。
人生を変える出会いがあるかもしれません。
なお、本格推理13はなかなか手に入らないので、本で欲しい方は中古本を探してゲットするか、近くの図書館で借りてみるしか読む方法はないかと思いますので、あしからず。
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